EC(Electronic Commerce:電子商取引)にはいくつか種類があり、その中の企業間のECを指す言葉が「BtoB-EC」です。オンラインショッピングや通販などの企業と消費者の取引を指す「BtoC-EC」と同じく、BtoB-ECの市場規模は近年拡大傾向にあります。
この記事では、BtoB-ECの特徴や企業がBtoBのECに参入するメリットやデメリットについて詳しく解説します。
BtoB-ECとは
BtoB-ECとは、企業間の取引を指すBtoB(Business to Business)と、電子商取引を意味するEC(Electronic Commerce)を組み合わせた言葉です。BtoB-ECは、企業同士の取引をインターネットやECサイトを通じて行うことを指します。
これまで企業間の取引は、電話注文や紙の発注書をFAXで送信するなど、アナログな方法が主流でした。しかし、インターネット技術の普及により、これらのアナログな取引からオンライン上での取引に移行する企業が増えています。
BtoB以外のEC
ECにはいくつかの種類があり、取引を行う当事者の関係(属性)によって「◯to◯-EC」と呼び分けられています。
名称 | 詳細 |
BtoC-EC(Business to Consumer) | 企業と消費者の間で行われるEC。食品、衣類、電化製品、雑貨など、生活に必要なものが扱われる。 (例:Amazon、Yahooショッピング、楽天市場) |
CtoC-EC(Consumer to Consumer) | 消費者と消費者の間で行われるEC。不要になったものの他、ハンドメイド作品なども扱われる。 (例:メルカリ、ヤフオク) |
DtoC-EC(Direct-to-Consumer)
| メーカーやブランドと消費者の間で直接行われるEC。ショッピングサイトや卸売業者などの仲介が入らないことがBtoC-ECとの違い。 |
なお「EC」のみと表記する場合、一般的にはBtoC-ECを指すことが多いです。この記事では言葉の意味を明確にするために、企業間の取引は「BtoB-EC」、企業と消費者間の取引は「BtoC-EC」と記載します。
BtoB-ECの市場規模
インターネット上で取引を行うECは、従来のアナログな取引手法で生じていた非効率性やミスをなくせるなどのメリットがあるとして、多くの企業で導入が進んでいます。
下記は、経済産業省の「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」を元にした過去3年分の市場規模の推移です。市場規模・EC化率がともに伸長していることがわかります。
| 2019年 | 2020年 | 2021年 |
EC市場規模 | 352兆9,620億円 | 334兆9,106億円 | 372兆7,073億円 |
EC化率 | 31.7% | 33.5% | 35.6% |
※EC化率:すべての商取引において、EC(電子商取引)の市場規模が占める割合
またこちらの記事では、BtoC-ECの市場規模やEC事業の手法など、EC全般の基本知識について解説しています。ぜひあわせて参考にしてください。
参考事例:EC事業とは?概要・種類・市場規模・メリットデメリットなど解説
BtoB-ECの特徴
ECと一口にいっても、その特徴はBtoB-ECやBtoC-ECなどの種類によってさまざまです。このため、これから取引先や他の企業との取引にECを活用したいと考えている企業担当者の方は、それをしっかりと理解し、ECサイトや運用フローを整備する必要があります。
ここからは、BtoB-ECの4つの特徴について、BtoC-ECと比較しながら解説していきます。
1取引あたりの量と金額が大きい
ECに限らず、企業間の取引は企業と一般消費者間の取引に比べて、1回あたりの取引量や金額が大きいです。
BtoC-ECの場合、日用品や食料品、衣類などを個人が必要な分だけ注文します。また、注文のタイミングは基本的に「必要になったとき」なので、不定期です。一度注文してくれた人が、また同じ注文をしてくれるとも限りません。
このため、BtoC-ECの事業者は多種多様な商品を少しずつ取り揃え、販売状況や時期によって商品を入れ替えたり、追加で発注したりする必要があります。
一方、BtoB-ECでは1回の取引の量と金額が大きく、注文も月1回など定期的に発生することが一般的です。1回に大量に発注されるため、企業はそれに備えて在庫を確保しておく必要があります。
また、取引を行うECサイトで購入ロットを設定したり、自動的に繰り返し注文ができるような機能を搭載したりする必要もあるでしょう。
注文までの流れが複雑
注文に至るまでのプロセスも、BtoC-ECとの違いの1つです。
まずBtoC-ECの場合、消費者がECサイトなどを訪問し、商品の購入を決めると同時に注文・決済が行われます。注文前に販売企業に問い合わせを行うケースもありますが、基本的に企業はECサイトに商品の掲載が完了すれば、後は注文が来るのを待つだけです。
一方、取引規模が大きいBtoB-ECでは、以下のようにプロセスが複雑化します。
- 買い手企業がECサイトなどを訪問し、売り手企業に見積書の発行を依頼する
- 売り手企業が発行した見積書を元に、社内で検討・稟議・承認が行われる
- 社内で承認が得られたら、発注を行う
注文に至るまでに「◯日までの納品は可能か」「毎月◯ロットの定期納品は可能か」といった問い合わせが入ることもあるでしょう。
販売価格が顧客ごとに変動する
企業と一般消費者との取引では、セールや会員向け価格など、時期や対象者を限定した商品が値下げされることはあっても、顧客一人ひとりに対する価格調整はありません。
対して、企業間の取引では、取引の量や顧客との関係、発注前の交渉などにより、同じ商品であっても販売価格が顧客によって異なるケースが珍しくありません。
このためBtoB-ECにおいては、ユーザー(顧客)ごとや注文量などの条件に応じて価格が変更されるように、ECサイトを構築する必要があるのです。
掛売りが中心
注文と同時に決済を行うことが主流のBtoC-ECに対して、BtoB-ECでは従来のアナログ手法による取引の流れを引き継ぎ、ECにおいても掛売りが行われることが多いです。
決済を行わずに商品の出荷を行うため、ECサイトもそれに対応した仕組みにする必要があります。具体的には、対象期間の取引金額を一覧で見られる機能や、注文ごとの支払状況を確認できる機能などがあげられるでしょう。
ただし、EC以前からの取引相手には掛売りを行い、新規の顧客には取引ごとに決済を行うケースもあります。
BtoB-ECのメリット
これまで電話やFAX、メールなどで取引を行っていた企業がECに移行することで、業務の効率化や販売機会の拡大などのメリットが得られます。詳しく解説していきます。
受注業務を効率化できる
現在、電話やメールなどで注文を受け付けている場合でも、受注や在庫の情報はシステムやExcelシートなどで管理している企業が多いです。このため、受注のたびに商品番号や数量、取引相手などのシステムなどへの入力作業が発生していました。
これらの作業は時間がかかる上に、入力ミスや読み間違えなども起こりやすく、発送の遅れやミスなどを引き起こす原因となっていました。
ECの導入により、発注情報を最初からデータで管理することが可能になるため、作業の効率化やミスの防止が期待できます。
注文を24時間受け付けられる
システムはメンテナンスの時間を除き、基本的に24時間365日稼働可能なため、業務時間内に限定されていた注文の受付を、深夜や週末、祝日などにもできるようになります。
24時間受付できることは、買い手(発注者)にとってもメリットです。電話やFAXなどでしか注文ができない場合、担当者は発注するために事務所の電話機を使わなければいけません。
しかし、インターネットさえあれば利用できるECサイトであれば、外出中や在宅勤務であっても、空き時間を使って発注を行えます。
顧客対応工数を削減できる
前章「BtoB-ECの特徴」で解説したとおり、企業間の取引では注文の前に商品の詳細や納期、在庫に関する問い合わせが発生することも多々あります。
1回ごとの問い合わせ対応にかかる時間は短くても、電話がかかってくるたびに作業を中断して対応しなければいけないため、生産性の低下を招きかねません。
ECサイトでは、商品の詳細情報や在庫数、納期の目安などを記載しておくことで、問い合わせの数の軽減につながります。問い合わせフォームなどを用意すれば「電話がかかってきたが受けられなかった」「担当者不在ですぐに回答できなかった」などによる販売機会の損失も防止できます。
販売機会を拡大できる
インターネットさえあればどこからでもアクセス・注文ができるECサイトは、販売機会の拡大にも効果があります。
ECサイトが検索エンジンで上位表示されれば、売り手側からわざわざ営業をかけなくても、買い手側から企業や商品を見つけてもらえます。動画や写真を活用して、パンフレットなどでは伝えきれない詳細な情報を伝えることも可能です。
ECサイトで注文や決済にかかる作業を自動化すれば、空いた工数を大口顧客のフォローや新規開拓などに充てられるでしょう。
BtoB-ECのデメリット
従来のアナログ手法による受発注にはない、さまざまなメリットがあるBtoB-ECですが、導入を検討する上では知っておきたいデメリットも存在します。詳しく解説しますので、それぞれをしっかりと理解し、事前に対策しておきましょう。
導入コストとメンテナンスコストがかかる
電話やメールなどによる取引からECへの移行には、一定のコストと時間が必要です。ECサイトの構築方法にもよりますが、自社専用のサイトを開発する場合、要件定義や設計から開発、試験稼働、本格稼働まで合計で数ヶ月~1年程度かかることもあります。
また、導入後にはシステムやサーバーのアップデートなどのメンテナンスが発生します。顧客情報を取り扱うため、セキュリティ対策も欠かせません。自社でスキルを持った人材を雇用する他、外注する方法もあるため、それぞれのメリット・デメリットやコストをふまえて検討しましょう。
取引先との受注業務でECサイトを活用する場合にどれくらいのコストがかかるのか気になる方は、こちらの資料もあわせてご確認ください。
▼ワーク式 受発注業務システム化の費用対効果の考え方
サイトの情報を最新・正確に保つ必要がある
BtoB-ECにおいて、ECサイトは自社の商品をアピールし、受注につなげるショールームのようなものです。当然、そのサイトに掲載されている商品の概要や在庫数などの情報は、全て常に最新・正確であることが必須です。
仮に、ECサイトに記載されている在庫数が実際よりも多い、または少ないとしましょう。サイト上の在庫数が実際より多い場合、注文を受けても在庫が足りず、出荷できない事態が発生します。反対に在庫数が実際よりも少ない場合、顧客が発注を諦めてしまうかもしれません。
取引数が多い場合、受注や発注のたびにECサイト上の在庫数を変更するのは手間であり、ミスの元です。より効率的に運用するため、在庫システムや発注システムなどとリアルタイムに連携する仕組みが必要になるでしょう。
既存顧客への説明とサポートが欠かせない
買い手(発注者)側にもメリットのあるBtoB-ECですが、これまでの電話やメールなどによる発注に慣れていた顧客の中には、新しい運用に難色を示す人がいるかもしれません。
その場合、例外的に一部の顧客のみ既存の方法を継続するか、丁寧な説明やフォローを行った上でECへの移行をお願いするかになります。
従来のやり方を変えることは、買い手にとっても手間やコストがかかるものです。ECのメリットやサイトの操作方法などを詳しく解説したうえで、ECサイトを利用する全ての関係者がスムーズに移行できるように努めましょう。
BtoB-ECサイトの種類
BtoB-ECは、BtoC-ECと同じくオンラインのECサイトを通じて受発注を行うものです。しかし、取引の対象者を既存顧客に限定するかどうかで、「クローズド型」と「スモール型」の2つのタイプにわかれます。詳しく解説していきましょう。
クローズド型
クローズド型のECサイトとは、その名の「閉じられた」という意味の通り、既存顧客のみを対象とするECサイトです。
商品ページを表示するためにIDとパスワードが必要だったり、URLが一般公開されていなかったりと、限られた人のみがアクセスできる仕組みになっています。
クローズド型のECサイトは、従来の取引方法をそのままECに移行したような運用であることが多いです。このため、取引先によって商品の販売価格や割引率が異なる、掛売りが基本、といったことがよく見られます。
スモール型
スモール型のECサイトとは、ECサイトのURLがインターネット上で一般公開されており、基本的に誰でもアクセスできるECサイトです。一般消費者向けのオンラインショッピングサイトのビジネス版とイメージすればわかりやすいでしょう。
既存顧客のみならず、日本中(あるいは世界)の事業者を利用者として想定している点が、クローズド型との違いです。また、掛売りではなく銀行振込やクレジットカード払いなどによる注文ごとの決済が主流です。
スモール型のECサイトは、これまで営業ができなかった遠方地の顧客や潜在顧客として認識していなかった顧客からも注文を受けられる点がメリットです。一方で、注文の殺到によって在庫切れが起きたり、既存顧客へのフォローが手薄になったりする可能性があります。
クローズド型、スモール型にかかわらず、ECサイトの構築は実際の利用シーンや運用プロセスをイメージしながら、計画的に進めることが重要です。こちらの記事では、ECサイトの構築について詳しく解説しています。ぜひあわせて参考にしてください。
参考記事:ECサイト構築にかかる費用は?相場・内訳・検討ポイントなど解説
BtoB-ECは目的に応じたサイト構築が重要
同じBtoB-ECでも、既存顧客との取引の効率化を目的とするか、あるいは新規顧客の獲得を目的とするかで、サイトの方向性や要件が変わってきます。EC導入の目的を達成できるよう、プロジェクトの立ち上げ時点で関係者間で認識合わせをしておくようにしましょう。
ECの導入時には、ECサイトの構築のみならず、オンラインでの取引にあわせた業務フローやルールの再構築も必要になります。
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